秀樹塾
 ホーム  クレヨン社  アルバム  加藤秀樹  柳沼由紀枝  
秀樹塾  50の問答  エッセイ  スタヂオ 蔵出し音源
 
心霊写真


この写真は、四ッ谷の某スタジオで撮影されたものだ。
この時は3枚目のアルバム制作中で、スピーカーの真ん中でニヤけているのは僕だ。
録音風景を写したスナップ写真なのだが、僕の左肩の上に注目してほしい。なんと青白い手がぼんやりと写っているではないか!しかも窓の外は地上8階だ。

僕はこの写真を見た時、これが世に言う貴重なる「心霊写真」であると確信した。
そういえばスタジオのように磁場が集中するところには霊が出やすいという話をよく耳にする。
吹き込んだ覚えのない声が録音されていたとか、居眠りしていたら霊に頭を叩かれたとかいう噂はしょっちゅうだ。(実際、柳沼もこのスタジオのソファーに横になっていたら、誰もいないのに頭をポンッと触られたと訴えた事件もあった。)

僕は得意になってこの写真をスタッフに披露した。予想どおり彼らは大いにウケてくれて大変な騒ぎとなってしまった。
「宜保愛子に見てもらえ」とか「イタコにおがんでもらえ」などと言い出す者や「過去の女性関係は大丈夫か」などと心配する者までいた。
柳沼などは何がうれしいのか、この写真を大きく引き伸ばし誰彼かまわず見せて回るという始末だった。
この話を聞き付けたスタジオ関係者は、お坊さんを呼んでスタジオを御払いしてもらおうという話まで出たらしい。

その前に現場検証だということで、僕はスタジオに呼び出された。
みんなでゾロゾロとスピーカーの後ろに集まった。
僕はまた得意になって「青白い手がここに…」と指差した。
そこには…誰かの脂ぎった手形が窓の内側にペタリとついていた。それも写真とまったく同じ位置に。
カメラのフラッシュで、普段見えないものが照らし出されただけだったのだ。
僕は恥ずかしさで顔から火が出る思いだったが、笑ってごまかした。けど誰も笑ってはくれなかった。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とはよく言ったものだ。けれど世の中には正体が見えないほうが幸せだったりする事もあるのだ。

<戻る