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異世代コミュニケーション


手づくり名刺

近所の本屋で買い物をしたあと、自宅近くのコーヒーショップで、買った本を眺めていたときのことである。
「あのう・・・パソコンおやりなんですか?」
 声をかけてきたのは隣の席でコーヒーを飲んでいた初老の紳士だった。
「ええ、まあ・・・」突然だったので、ちょっとうろたえながら僕が答えると、
「いや、・・・私も最近パソコン教室に通い始めたばかりで、興味があるもので・・・」
 僕が眺めていた本は、写真をレタッチ(修整)するための、パソコンソフトの解説本だった。
 それから初対面の僕ら二人は、少しの間だがパソコンと写真談義に花を咲かせることとなった。
しばらくして僕が「そろそろ・・・」と言って席を立つと、「これは私が初めて自分で作ってみた名刺なんですが・・・」と、うれしそうに一枚の名刺をくれた。
 僕は近所への買い物なので名刺など持っているはずもなく「これはごていねいに」と言って、その場を去った。
 店を出てから名刺をよく見てみると、その紳士は清水さんという名前で、自宅の住所が書かれてあった。
お世辞にもオシャレなデザインの名刺とは言えないけど、手づくり感あふれるその名刺に、僕は不思議に愛着が沸いて、ついさっき名刺をくれたときの清水さんのうれしそうな笑顔がよみがえった。
僕は家に戻ると自分の名刺を一枚持ってコーヒーショップへ戻った。
 清水さんは、まだのんきにコーヒーを飲んでいた。
「先ほどは名刺を持ち合わせてなかったもので・・・」
 僕の突然の再来に、今度は清水さんがうろたえた。
「ああ、これはこれはどうも・・・」
「これは僕が作った名刺なんです。写真をレタッチするとこんなのが作れるんです」
「へぇ〜・・・」
清水さんは興味深げに名刺に見入っていたが、「それじゃ」と言って、僕は店を後にした。

Eメール

それから数日後清水さんから電話が入った。
「あれから私もデジタルカメラに興味を持ちまして、買おう思うんですけど、どんなのがいいですか?」
 僕も人に教えるほど詳しくはないのだが、とりあえず自分の使っているデジカメを勧めてみた。
 しばらくすると清水さんから郵便が届いた。自宅の庭に咲いた花をデジカメで撮影し、パソコンに取り込んでレイアウトしたもので、きれいにまとめられていた。早速デジカメを購入したようである。
 僕も清水さんに郵便で返事をしたが、ついでにEメールを始めてみることを勧めてみた。
 またしばらくすると、今度は郵便ではなく、Eメールが届いた。
清水さんは思いついたらやることの早い人のようである。早速インターネットに加入したというのだ。
インターネットの機能のひとつであるEメールは、手紙のように時候の挨拶は抜きで、用件だけのやりとりになるのが通例である。
だけど僕の場合、用件だけだとそっけないので、相手をさりげなく気遣う言葉を付け加えることにしている。
そんなふうに清水さんとメールのやりとりを重ねていたら、お互いが知らず知らず、友達口調になっていた。
その後久しぶりに清水さんと再会し、一緒に飲んだとき、世代の違う者同士なのに、すっかり友達になっていたことに僕自身驚かされた。
僕が清水さん世代と話をする場合は、家族や親戚でもない限り、友達口調は使えないし、ましてやふだん仕事で合う人などは偉い人ばかりなので、いつも恐縮しっぱなしである。
インターネットとはコンピューター間を接続する意味であるが、どうやら世代間も接続させるようである。

清水風カレー

 清水さんは現在、デジカメとパソコンを使って地元の歴史資料を編集するサークル活動に精を出しでいる。Eメール仲間(メル友)も増え、毎日のようにやりとりをしているという。
  でも、清水さんがパソコンを始めたのは、定年後で、パソコン歴は4年にも満たないというから驚きである。
 そんな清水さんの定年前はというと、ある大手企業で食品関係の企画や開発の仕事にたずさわっていたらしい。
 食い物に興味のある僕はあれこれと清水さんに尋ねてみたところ、こんなエピソードを話してくれた。
 あるとき清水さんの部署で商品開発のためのカレーの試食会があり、それぞれの社員が独自のカレーを作ることになったそうである。
 女性社員が作るカレーは見た目もきれいで、いかにもうまそうだったらしいが、清水さんのカレーは作り方も雑で、みてくれも悪いカレーだったという。
 しかしみんなで試食してみると清水さんのカレーが一番うまいと絶賛を受けたというのである。
 清水さんは子供のころから野菜嫌いだったという。細かく刻んでしまえば食べられるけど、大きいままだとどうしても喉を通らないらしい。
 そこで昔から自分でカレーを作るときは、あらかた煮込んだ野菜と肉をミキサーで細かくし、そこにカレールーを加えて仕上げていたそうだ。
 ポイントは市販のルーは使わず、カレー粉と小麦粉で炒めたカレールーが一番だという。
 僕も清水風カレーを作ってみたが、「混ぜ派」の僕にとっては恐ろしくうまいカレーだった。
「野菜嫌いの子供でもこれなら大丈夫」と清水さんもお奨めである。

 ホームページ作りに挑戦!

さて、インターネットの機能には、Eメールともうひとつ、ホームページを閲覧するという機能がある。
ホームページとは個人や企業が、それぞれの情報をネット上に公開しているページのことである。
快適なインターネットライフとは、自分に必要な情報があるホームページをすばやく探し出し、それらを効率よく活用することである。
さらに、もう一歩進めば、情報を入手するだけではなく、発信することも可能である。つまり、自分のホームページを作ってしまうことである。
僕も去年の秋に自分のホームページを作り、公開した。長いこと休止していたアーティスト活動を再開し、アルバムを発売するためである。
公開当時に僕のホームページを見に来てくれる人はわずかだったけど、今ではだいぶ多くの人が見に来てくれるようになった。
これがまさにインターネットの力というもので、見てくれた人が次々と情報を発信し、僕のホームページを紹介してくれるからである。
清水さんのように、定年後パソコンを覚え、インターネットライフを満喫している方も大勢おられるが、さらに自分のホームページを作り、インターネット上で話題になっている人も少なくない。
その人達は自分の趣味である盆栽日記や旅行記録を公開しているだけなのだが、同じ趣味を持つ人達が自然にそのホームページに集まるようになる。
たまに「オフ会」といってホームページの常連さんたちが集まって飲み会をすることもあるという。
僕と清水さんもインターネットで仲良しになったようなものなので、一緒に飲むときは「オフ会」と呼ぶことにしている。  
前回の「オフ会」で清水さんは「次はホームページ作りに挑戦だ!」と意欲を燃やしていた。


私事で恐縮ですが、僕のホームページもぜひ覗いてみてください。タイトルは「クレヨン社ってまだいたの?」タイトルが自虐的過ぎるとファンからは不評ですが、このタイトルで検索すればみつかります。

アドレスはhttp://crayon-sha.com


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